yokohamanekoの日記

横浜で猫2匹と暮らしております。

28年前の入社式 その一


今日から、新年度ですね。
私の会社は、今月決算なので、あまり関係ないのですが、
お取引先様は、いろいろと入れ替わりがあって大変のようです。

入園式、入学式、あるいは入社式と、今日はあるのでしょうね。
お天気が良くてなによりでした。


私も一度だけ、入社式と言うのに出た事があります。
高卒で、就職した28年前…。

場所は、中野サンプラザ。 一応、一部上場企業。
いや、今にして思えば、一応じゃなく、毎年一万人以上の
新入社員を迎え、マンモス入社式を行う一流企業だったのです。
しかし、流通大手とは言え、たかがスーパーと、見下していた
18歳の幼稚な私が、そこにはいたのでした。


今にして想い返すも、記憶は定かではありませんが・・・。


中野サンプラザの舞台…、天井から吊り下っているミラーボール。
どんな人だから分かりませんが、ともかくも偉い人が次々と
現れ、いろいろ訓示を述べます。

確か、グループ総数で2万人以上の採用があったはずです。
その全てを同時に研修する事は出来ませんから、1班と2班に分れ、
入社式前に、1班、後に2班が研修を受けたのでした。

私は2班で、すでに研修を終え、舞台の前方に制服を着て居並ぶ
1班の後ろ姿を見ておりました。
司会進行役は徳光和夫氏と記憶しております。

舞台上から問いかける徳光氏に、1班の連中は、驚くべき一体感で、
声高らかに返事を返すのでありました。
まるで、蚊帳の外に置かれたような、2班の中で、誰かが、
「ああは、なりたくねぇよな」
と言うのが聞こえました。
その時、確かに、私もそう思いました。

芸能人のアトラクションもありました。
「サーカス」と言うグループをご存知でしょうか?
「Mr. Summer Time」と言うヒット曲がありました。
そのサーカスが、何曲も歌を披露しました。
ミラーボールの光が、客席を照らし、4人の美しいハーモニーが
場内に響き渡ったのでした。

大きい会社ってすげぇんだな・・・と阿呆な私はそんな事を
ぼうっと思っていたのです。


華やかなステージが終わると、1班は解散。
2班はその場に残され、そのまま研修に入ります。

閑散となった舞台に「秋田店店長」という方が現れ、
入社の祝辞を述べ、またしても訓示を述べられました。
そして、研修の始まりを宣言したのです。

「さて、皆様には、入社式に臨む前に、我社から
 パンフレットが郵送されているはずであります。
 そのパンフレットには、我社の躾け、身だしなみに関する
 マニュアルがあったはずです。 お分かりですね。」

確かにありました。 でも、ちょっと回りを見渡してみましたが、
その通りにしている人は見受けられません。

「我社のマニュアル通りにしてこなかった者、その場に立ちなさい」

言い方は静かでしたが、有無を言わさない圧力がありました。
何人かが立ち上がりましたが、何百人もいるうちの何人かですから、
殆ど立たなかったと言った方が正しいかもしれません。

秋田店店長は、場内をぐるっと、にらみつけ、こう言いました。

「貴様ら、それでも社会人か!! 自ら立て!!」

まるでライオンが吼えた様な怒声が、中野サンプラザPA
歪ませました。 場内の空気はいっぺんで凍りつき、さきほどまで
の和やかさなど、遠い昔の幻のようにさえ思えたのです。

ぱらぱらと何人かが立ち上がりました。
しかし、それでも殆どの人間は座ったままでした。

「もう一度言う。 社会人なら、自ら立て」

今度は大声ではありませんでしたが、心拍数の上がってしまった
我々には十分に怖ろしい言葉でした。

「皆さんがそうなら、仕方ありません。
 今から、皆さんの教育担当が席を回りますから、
 肩を叩かれたものは立ちなさい」

場内を、スーツ姿の社員が回ります。
結局、ほぼ全員が立たされました。

「今、立っている者、今日中に身だしなみをマニュアル通りに
 整える事。 分かったな。 以上!!」

もちろん、私も立たされました。

身だしなみのマニュアルとは、いろいろありますが、
主に頭髪の事であります。

前髪は、まゆにかからぬ事、
横の髪は、耳にかからぬ事、
後ろは刈上げる事、
七三にきちんと分ける事。
長髪、パーマ等の加工する事、厳禁、
着色、厳禁。

研修所に詰め込まれると、我々は床屋に行かされました。
行かされた床屋には、壁に社のマニュアルが張ってあり、
どう、注文をつけようと、その通りにしか刈ってもらえないのです。


それからの4泊5日、我々は、「社会人」として、
徹底的な教育というものを受けるのでした・・・。



続く