28年前の入社式 その二
そんな訳で、我々は、研修所に放り込まれたのであります。
久々に刈上げにされた後頭部が、むやみに涼しかったのが
今でも思い出されます。
研修所には、一部屋6,7人が泊まったのでありましょうか?
それが、一班とされ、班単位の行動を原則とされました。
班の中には、2、3人の大卒者がいて、ぶうたれる高卒者を
なだめるのが役割だったと、後から聞いたことがあります。
何より、自分の部屋でもそうでしたから…。
ともかくも研修は始まりました。
びっちりのスケジュール。
社史のスライド上映やら、取締役の訓示やら、
元バレーボール監督のお話しやら…。
一応、制服のブレザー、スラックス(女子はスカート)を着用
なのですが、なぜか、靴は運動靴。
当然、現場では革靴ですが、移動の激しい研修ではこのように
なったのだと記憶しております。
ようやく迎えた初日の昼食…。
しかし…。
疲れ切って、昼食のテーブルにありついたものの…、
こんなお話しが…、
「これから、昼食にする。
しかし、その前に、午前中の○○先生のお話しの途中、
居眠りしていた者、立て!!」
ああ、またかよ…。
しかし、入社式の教育(?)が行き届いていたのか、
かなりの人数が立ち上がりました。
私は、一応、寝てはいなかったので立ちませんでした。
「よし、今、立っている者を除いて、昼食にする。
いただきます!!」
ほっとしたせいか、ぼそぼそ~~と、いただきます~~…、
とたんに、
「声が小さい!! やり直し!!」
一瞬にして、座っている者も、背筋が伸びました。
「いただきます!!!」
その後、立たされた者には、説教が続きました。
「お前らは、今まで、授業料を納めて、学校へ行っていた。
金を払っているんだから、寝ようとどうしようと、お前らの勝手だ。
ちがうか?
しかし、今、お前らは、給料をもらって、ここにいるんだぞ。
ちがうか?
お前らは社会人なんだぞ。 分かってるな?」
立たされた者もようやく昼食を許されました。
万事がこんな感じで、研修期間が流れました。
なにをどうやっても、教育担当社員からは、怒声が飛び交う。
「それでも社会人か?」
「社会人としての自覚があるのか?」
「社会人がそんな事で務まるのか?」
なにかと、二言目には「社会人」でした。
憤懣やりかたない思いを、部屋に帰って爆発させていると、
大卒者は、一生懸命なぐさめてくれるのでありました。
それが、会社の意図なのか、あるいは偶然なのかは分かりません。
しかし、それが部屋の一体感となったのを、今気付くのであります。
研修中に怒鳴られ、殺意ほどの嫌悪感を持って部屋に戻っても、
「あれが仕事なんだよ。本意じゃないさ。 我慢、我慢、
ずっと続くわけじゃないんだせ。 がんろう!」
大卒のリーダーたち(暗黙の了解でそうなるのです)が我々をなだめ、
なんとか、研修は続きました。
そして最終日…。
更に続く…