yokohamanekoの日記

横浜で猫2匹と暮らしております。

小川典子ピアノリサイタル その2

会場の照明が落とされ、ぼうっとステージが浮き上がります。
私語が止り、客席の集中がステージに集まります。

今か、今か・・・。

ステージ左手の扉が開き、小川さんが入りました。
待ってました!
とばかりの盛大なる拍手。

ノースリーブのドレス。
白地に、葉の模様をあしらったようなドレス。
にこやかにお辞儀する小川さんの笑顔は、とても素敵でありました。



椅子に座り、やや位置をずらし、ピアノに向かいます。
つい今しがた、客席に振りまかれた満面の笑顔は消え去り、
唇を真一文字に、きっと絞めた表情が見えました。

両手を合わせ、手もみするようにしています。
精神を集中させているのでしょうか・・・。

ドレスに手を擦り付けるようにしましす。
手の平に汗があるのでしょうか・・・。
ふっと息を吐いたように見えました。
両手を鍵盤の前に出しましたが、また引っ込めます・・・。

また手もみをし、深呼吸をしているように見えました。


この瞬間が、私はたまらなく好きなのです。

幼き頃から、研鑽を重ね、
技術と音楽性を極限まで鍛え上げてきたプロでさえ、
人前で演奏する時には、第一音を軽々しく出せないのです。

人間がやる音楽だから素晴らしいのだと思います。
そして、その緊張感は、観客も共有しております。

ステージ上、
演奏者の一挙手一投足にまで、
我々の緊張が高まった後、
小川さんの両手がピアノに伸びました。


どーんと言う、低音の響が、ホール内に鳴り渡って、
我々は度肝をぬがされました。

ベートーヴェン作曲
ピアノソナタ第八番 ハ短調 作品番13 「悲愴」
の始まりであります。

「悲愴」という副題はありますが、
立ち上がりこそ、重々しく、苦しい思いを感じますが、
すぐにアップテンポで、メロディアスなる旋律に変わります。
これを繰り返し、第一楽章は終了。


楽章間の緊張・・・。


CDでは、何秒かで、演奏が始まります。
しかし、小川さんは、第一楽章を終えた安堵感を切り捨て、
第二楽章へと集中力を高めているようです。
実際にはそれほど長い時間ではありませんが、
CDに慣れた我々には、怖ろしく長く、そしてまた、
新鮮なる緊張感を持ちながら、第二楽章を待ちます。


第二楽章、
あまりにも有名なる旋律です。
ポピュラー音楽の中にもいろいろ取り入れられ、
ビリー・ジョエルが歌詞をつけて歌っているのは有名であります。

旋律の美しさに、目を閉じて音の快感に浸ります。
悲しい、というより、優しい、と思える、ゆったりとしていて、
優雅な旋律に、全ての聴覚を委ねます・・・。

演奏者にとって、テクニックに走らず、音数の少ない旋律を
感動的に演奏するのは、至難の業でありましょう。
このへんに、プロとアマの線引きが出切ると確信した演奏でした。


第三楽章を終え、大喝采を浴びた小川さんが、
ステージを後にしました。

まだ、一曲終ったばかりだというのに、
もの凄い感動でありました・・・。

以下に動画を紹介します。
おヒマな時にどうぞ。
第二楽章は必聴ですよ♪(爆)

第一楽章↓



第二楽章↓



第三楽章↓


続く・・・