yokohamanekoの日記

横浜で猫2匹と暮らしております。

「1995年のスモーク・オン・ザ・ウォーター」

1995年のスモーク・オン・ザ・ウォーター」 
 
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その本は平積みのコーナーにあった。
書店や出版社が「売ろう!」と意気込んでいるのが積んである。
私はミーハーなので、そんなのに弱い。いつもついうっかりと手をだし、
積ん読になっているものが多いのなんのって…。
 
ま、それはいいのだが…。
 
今回、私をぐ~んと引き付けたのはスモーク・オン・ザ・ウォーターと
いうタイトルである。発音的には、スモーコンザウォラーとか言いたい。
スペルで言うと、Smoke On the Waterである。
1970年代、レッド・ツェッペリンと双璧をなした伝説のグループ、
ディープ・パープルの代表曲である。
大ヒットアルバム「マシン・ヘッド」のB面、1曲目を飾っていた。
おっと、これは無論、LPレコードの話である。若い人はスルーするように…。
 
私も若かりし頃はバンドなんぞと言うものをやっており、ギターとヴォーカルを
やっていた。しかし下手の横好き、ギターも歌も下手の極致であった。
そんな時代、誰もがこの曲を必死になってコピーし、練習した。
それなのに、練習や、スタジオ内でのセッションでは演奏される事はあっても、
決して人前での演奏、即ちライヴで演奏されることは無かった。
全くとは言わないが、これを演奏するバンドは鼻で笑われた。
名曲ではあるが、ロックバンドの登竜門のような曲だったせいなのかと思う。
例えば、ピアニストが演奏会でバイエルを演奏する事はあるまい。
 
そんな曲の中に、ローリング・ストーンズの「サディスファクション」もあった。
スモーク・オン・ザ・ウォーターにしてもサディスファクションにしても、
リフ(楽曲の最初に出てくるギターの旋律)は印象的だ。
素晴らしいが故に誰もがコピーし、みんなが弾けるから、みんな演奏しなくなる。
 
と、昔話はそれくらいにして…。(爆)
 
 
さて、舞台は1995年。
下野した自民党が、社会党と連立を組むと言う暴挙で返り咲く。
阪神淡路大震災が起こり、悪夢のような地下鉄サリン事件が発生した。
そんな暗い世相の中、44歳の井口美恵子、学生時代から腐れ縁の友坂かおり、
この二人は性格が正反対であった。優等生で堅実な美恵子、自由奔放のかおり。
かおりが美恵子に借金を申し出てきた。なんと40万円である。
かおりに金を貸した美恵子は、これを口実にコンビニで働き始める。
実は、高校受験に失敗した息子と向き合うのが辛くなったからでもあった。
 
そのコンビニで、美恵子は万引き常習者の立花雪見を捕まえるのだが、
かおりがしゃしゃり出てきて、なんと、三人はロックバンドを組む事になる。
 
三人ではバンドにならないと、メンバーを募る。
現れたのが、広田新子。元プロ。素人の三人には大きな味方…、
になるはずだったが…。
 
 
バンドメンバー全員がアラフォー。と言うかアフターフォーティーである。
青春と呼ぶにはかなり遅すぎるが、青春時代に積み残した夢を今やって悪いか?
あの頃、やりたくても出来なかった。ちょっと遅いけど今やった。
それをやるには相当な勇気がいるが、彼女たちはやった。
笑われるのも、馬鹿にされるのも、覚悟だった。
いや、覚悟はぎりぎりで決めた。みんな臆病で、みんな背水の陣だった。
でもやった。
 
結構、クサイ小説でもある。
でも、バンド経験者には、かなりウルウルと来る物語なのだ。
 
東日本大震災で、物質的にも精神的にもダメージを受けている日本人。
状況は、1995年と似ているかもしれない。
この小説は映画化されていると言う。
どんな映画かは、見ていないので知らない。
でも、小説よりもはるかに分かりやすい映像メディアが今の日本に
元気を与えてくれればなぁ、と熱望する。