yokohamanekoの日記

横浜で猫2匹と暮らしております。

「痺れる」 沼田まほかる 光文社文庫

 
 

イメージ 1
 

本の帯にはこう書かれている。

 

一度ハマればもう抜けられない

まほかるワールドへようこそ

怖さも面白さも尋常じゃない九つの物語

 

もう、無条件に購入した。ついに短編だ。

作家の力量というのは短編に現れると言う。

限られた枚数の中でどれだけのストーリーを創れるのか。

重量感を醸し出す長編ももちろん良いが、短編では切れの良さ

が問題になる。だらだらと話を長引かせることができないからだ。

 

私は「猫鳴り」で感動した。これは猫好きだからと言う事が大きな

要因なので、「彼女がその名を知らない鳥たち」でたまげてしまった。

こういうのを書く人だったのか、と驚いてしまった。

人間が持っているリアルなグロテクスさをこれでもかと表す。

それに、内容はすごいが文章は素晴らしい。ベテラン作家のようだ。

しかし、まほかるさんは「九月が永遠に続けば」がデビュー作。

デビュー作でこのレベルかと驚く。作家としてのキャリアは始まった

ばかりだが、デビューの時点ですでに五十六歳だと聞く。

経歴を見ると若くして主婦となるが離婚、その後僧侶となり(!)

友人と共同経営の会社を興すものの倒産。借金の返済のために

小説を書き出した、とある。

生半可でない人生の積み重ねが文章に出るのか。作品の色に

なるのか…。

 

買って帰った日に半分以上読み、翌日完読した。

全部傑作だった…。

 

一番最初の「林檎曼荼羅」から圧巻である。

十二年目に失踪した義母の真実を語る年老いた女性。

息子を守るために自分がやったことを語る。

ゴクリと生唾を飲んでしまう驚愕の真実に驚く。

 

その他八編も切れ味が鋭い。

 

息が止まるようなのラストシーンが「ヤモリ」

ちょっとコミカルなところが新鮮な「テンガロンハット」

男女の愛憎が摩訶不思議な「エトワール」

 

ともかく、最後の落としどころが鋭い作品ばかりである。

 

やっぱりまほかるさんはただものではない。