yokohamanekoの日記

横浜で猫2匹と暮らしております。

ハチミツとクローバー その二

ハチミツとクローバー film story」 その二


私は文庫本を読むときにカバーというものをかけない。
本屋さんでかけてくれる書店名とかが入ったあの紙のカバーである。
読み終わった後、なんかの理由で本を探すときに、
あれがあると一々中をのぞかねばならず、面倒なのだ。

が、今回、例外的にカバーをかけて読んだ。
前回も言ったが、私は自意識過剰で小心者である。
本は仕事しながらも持ち歩いている。ちょっとした空き時間などに
少しずつ読むようにしている。
そんな時に横から見られて、笑われるかもしれない…。
おっさんが「ハチミツとクローバー」じゃな…。



どうでもいいので、本題に入る。

舞台は浜美大

建築科三年の竹本裕太は、油絵科一年の花本はぐみに一目惚れする。

はぐみは油絵の天才だった。そして同じく彫刻科八年の森田忍に
ほのかな想いを寄せる。森田も彫刻の才能があった。

森田もはぐみを心安く想ってはいるが、竹本の気持ちもわかっている。

陶芸科三年の山田あゆみは、建築科四年の真山巧に恋している。

ところが真山はアルバイト先の女性社長に夢中だ。


なんと、主な登場人物全員がほぼ片思いという凄まじい設定なのだ。
ま、でもこの手の小説としては、(もとはマンガだが)ともかくも、
ありがちな展開だ。

読み進めるといろいろな事件が起こる。
しかし、どの恋も成就しそうでしない。
おじさんとしては、結構イライラとしてくる。
こういうの読むには、すでにデリカシーが極度に不足していた。

が、しかし、読み終わった瞬間に、
おじさんはちょっと切なくなっちゃったのである…。
若いっていいなぁ~~~。

登場人物の五人は、恋に関しても、人間としても、未熟である。
まだ若いのだから当然だ。
それらが、摩訶不思議なる恋愛連鎖の中で、悩み、落ち込み、
泣き、また悩み…。

何かを探しているのだ。でも見つからない。分からない。
出口の見つからない迷路の中で同じところを回っているのかもしれない。
それでも留まる事は出来ない。いや、時々は立ち止まって途方にくれる。
しかし、また目指すのは前なのだ。

印象的なシーンがあるので抜粋する。

 修復士は笑いながら、そのまま竹本のスピードに合わせて併走した。
「乗るか?自転車ものっけられるぞ」
「だいじょうぶです」
 息を切らしながらも、竹本は断った。自分の力だけで帰りたかった。
「そうか。・・・・・・あ、わかった。自分探しの旅だろ?」
 急に修復士は目を輝かせた。
「違います」
 竹本はあわてて否定したが、その修復士は、そうか、そうか、と独り
合点して、楽しそうに頷いた。
「いいんだよ、隠さなくても」
「隠してません」
「いいなあ、若者は」
 修復士は急に何かを思いついたようだった。
「んじゃ、これ使え」
 ごそごそとダッシュボードの下に手を突っ込むと、そこに置いてあった、
手ぬぐいとミネラルウォーターのペットボトルを窓から竹本に手渡した。
「これ使って探せ、自分を」
 手ぬぐいには、宮大工/寺社修復/澤田組、そして電話番号が書いてある。それをうけとって、竹本は立ち止まった。
「・・・・・・ありがとうございます」
 去っていくハイエースをずっと見送った。わけもなくやたらにうれしかった。




物語は結論を迎えない。

竹本は宮大工でバイトをやりだした。
はぐみはスランプを乗り越え、油絵を書き出した。
真山は年上の恋に突き進む。
あゆみは真山を見守る。
森田は旅に出た。

みんな前を向いている。
それでいい・・・。