「きらきらひかる」江國香織
「きらきらひかる」 江國香織 新潮文庫
十二編からなる連作短編集である。
ホモの男とアル中の女が結婚した。
一般的にはありえない組み合わせであろう。
しかし、こんなちっぽけな島国にだって一億人以上の
人間が蠢いているのだ。
どんなカップルが誕生したって別段不思議でもあるまい。
睦月はホモで医者である。実直で思いやりがあるが、
ホモであるために女性とセックスは出来ない。
笑子は軽度の精神病をやんでいた。睦月の優しさも思いやりも
分かってはいるが、情緒不安定がそれを受け付けられない。
それでも二人は暮らし始めた。お互いがお互いを思っているのに、
やることはことごとく空回りし、深く傷つけあってしまう。
ふたりの両親、また睦月の恋人である(当然男)紺くんをも巻き込んで
物語は続く…。
この夫婦は常にタイトロープを渡っている。
睦月と言うのは確かに優しい。妻を全面的に受け入れているように思える。
しかし、それは妻に性的歓喜を与えられないコンプレックスの裏返しの様な
気もする。
妻の病状に対する判断は出来ても、その心の深層にまで立ち行く配慮に
欠けてる様な感もある。
また、笑子も夫の優しさを充分に知悉しつつも、その優しさに刃を向けて、
同時に己の心にも傷を付けていく事になる。
しかし、二人とも愛する事をやめない。
この場合の「愛」とは、一般的な夫婦の「愛」とは若干赴きが異なるかも
しれない。恋愛などと言う語彙からも少し違うような気もする。
しかし、このへんの解釈は感覚的なものなので、本を読む機会があったら
是非、考察していただけたらと思う。