ネタ切れ、共通ネタ…
その女性は、若い頃の宮沢りえさんの様な印象がありました。
年齢は二十代なかばといったところでしょうか。
清楚な感じに、上品な佇まいがありました。
上品さというのは、私のような貧乏人にとっては、時に、
厭味や、羨望を伴う、悪しき対象になり得るのですが、
彼女にはそんな事が、微塵も感じられないのでした。
彼女が私に手渡した一枚の紙切れには、こう書かれていました。
「2・4」
なんの事だか分からずに、首を傾げている私に、彼女が言ったのです。
「記念日ですよ。忘れないで下さいね」
記念日? 記念日日というからには、二月四日の事なのでしょうか?
なんの記念日なのでしょうか。
彼女は椅子に腰掛けていました。その向こうにはテーブルを挟んで、
老夫婦が座っています。彼女の両親でありましょう。
老夫婦は何もしゃべらず、ただ、にこやかにしているだけでした。
「もう、返さなきゃ。読み切れなかったんです」
そう言って彼女が鞄の中にすべりこませたのは一冊の文庫本でした。
「返す?」
「そう、返すの。キャンペーン終わっちゃったんですよ」
「キャンペーン?」
「そう、キャンペーン」
オウム返しに聞く私に向かって、彼女は楽しげに言うのでした。
たぶん、その後も、彼女は私にいろいろ話しかけたのです。
でも私がしたのは、適当な相槌を打つことと、彼女の言葉に対する
繰り返しだけでした。
そして、
目が覚めたのです。
ああ、やっぱり夢だったんだ。
意味不明の夢でした。なんだったのでしょう?
2.4
記念日
キャンペーン
読み切れなかった本…。
なにやら、ミステリーじみてきましたね。
いくら考えても分かりませんでした。
やがて二つ目の目覚まし時計が鳴り、
私は、圧倒的な現実である「仕事」に行くのでした。