車と線香

私は歩いていた。
夜中だった。

下を見ながら歩道を歩いていた私は、
歩道の上に乗り上げて停まっている車の
テールランプの前で立ち止まった。

私の車？
スカイライン、ＲＳ…。
走り屋がこぞって購入した、赤と黒のツートンではなく、
グレーとブラックのツートンカラー…。

４気筒１６バルブ、それまで、６気筒が売り物だった
スカイラインらしからぬ、パワーよりも、レスポンスを
重視した車だった。

しかし、それとて、大昔の話。
先日発表された、ニッサンＧＴ－Ｒの前では、
おもちゃに過ぎない。


私はズボンのポケットからキーを取り出すと、
運転席に乗り込んだ。
助手席の様子がおかしい…。

よく、カー用品売場に窓枠に取り付けられるような
灰皿が売っている。そんなようなものが取り付けられていて、
その中で、線香が立てられていた。
線香には火が灯っており、煙が立ち昇っていた。

？？

コンパネの下部にある、本来の灰皿の中にも
同様に線香が立っていた。無論、こちらも煙を上げている。


どうなっているのだ？

私の車に誰がこんな事をしたのだ？
車は施錠されていた。　私の他にキーを持っていた者が
いるのか？
私の頭は混乱していたが、なんの為す術もなく、
ただ、立ち昇る煙りを見つめるしかなかった。


私は車から、降りた。
ルーフに手を掛け、溜息ひとつ付いたところで、
道路の反対側から声を掛けられた。

道路の反対側には住宅があった。
その住宅の一つから、女性が声を掛けてきた。

彼女は道路に面した自宅のベランダから声を掛けたのだ。
私を呼んだに違いない。しかし、その名は到底、日本人の
名ではない、ＩＤのような名前だった。
しかし、確実に私は、その呼び名を私の事として認識して
いた。

彼女の表情は、間違えなく私に好意的だった。
しかし、私は彼女の好意に、好意で応える事ができない。

何故だ？


私はまた歩き出した。
この空間は、やはりおかしい。
なにかが歪んでいるような気がする…。

私は歩いている…。
そして、私の目の前に現れたのは、
また、スカイラインのテールランプだった…。

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起き上がって、時計を見たら、午前２時でした。
・・・

夢か…。
変な夢…。

私は確かに、若い頃、スカイラインＲＳに乗っていたんです。
今は、車を保有してませんが…。

あの女性は誰？
確かにＩＤで呼ばれました。　残念ながら覚えてないですが…。
この夢、ループしてるようですね…。

夢には意味があるって言うけど…。
何なんだろう？