しっぽ大王の独り言11
吾輩は猫である。
しっぽ大王ことボスである。
今日の吾輩の朝食は、二時であった。
いつものようにたいら氏をふみふみすると、
「おお~、ボスぅ、おはよぉ~」
と寝ぼけ眼でご飯を作ってくれた。
たいら氏はそのまま寝込み、吾輩もご飯を頂くと、
ごろんと寝ころんだ。
しかしである。
たいら氏は会社に行く時間になっても起きてこない。
これは寝坊であろうか?
しかし今日は水曜日である。水曜日は会社の休みが
よくあるから、きっと休みなのであろう。
いや、しかし待て。
たいら氏は、休み前は大酒をくらってご機嫌である。
布団も敷かずに、そのへんでごろんとなって寝る。
しばらくすると、
「おお、いけね!」
と起き上がり、布団を敷いて寝る。
またしばらくすると、
「あ、風呂入るの忘れた」
と言って、がばっと起き上がる。
でも、
「ま、いっか」
と言って、また寝込み、翌朝まで爆睡する。
昨日はそういう兆候が見られなかった。
吾輩は決断した。これは「寝坊」である。
同居人として、これは起こしてやるべきであろう。
我ら猫族にもそのくらいの人情はある。
人の情けと書いて「人情」ではあるが、猫にだって
このくらいの器量はあるのである。
早速たいら氏をふみふみするが、起きない。
熟睡である。 う~む…、仕方ない。
ふみふみを体ではなく、顔にやってみた。
効果は絶大であった。
「なんだよぉ~、ボスぅ~、痛いじゃんかぁ~」
よろよろと起きだしたたいら氏は壁の時計を見ると
固まった。
どうやら吾輩の判断は正しかったようである。
その後のたいら氏は、いつもの五倍ほどのスピードを
発揮し、出勤の支度を終えると、吾輩の頭をなでながら
こう言った。
「ボス、ありがとよ。でも十五分ばっか早く起こしてくれたら
もっと助かったなぁ!!」
世話の焼ける主人を持った猫も大変である。
大急ぎでスクーターに飛び乗った主人の後ろ姿を見送りながら、
吾輩は、まだ漆黒の闇の中を遊びに行ったのである。