yokohamanekoの日記

横浜で猫2匹と暮らしております。

「ジェネラル・ルージュの凱旋」 海堂猛

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正月の暇にまかせて一気に読んだ感がある。
本作は、「このミステリーがすごい大賞」受賞作である、
チームバチスタの栄光」の続編、正確に言えば、その間に
ナイチンゲールの沈黙」があるが、なんとこれらは同じ
時系列に組み込まれており、「ナイチンゲールの沈黙」を
読みそこなった私としては、次回、是非読んでみたくなった。
 
しかし、今は「ジェネラル・ルージュの凱旋」である。
舞台は東城大学医学部付属病院である。
チームバチスタの栄光」で一気にスターダムにのし上がった(?)
万年窓際講師の田口と、厚生労働省の論理怪獣である白鳥。
今回もこの最強(最凶?)コンビがチームを組む。
 
そして血まみれ将軍(ジェネラル・ルージュ)の異名を持つ、
東城大学医学部付属病院救命救急センター部長、速水。
 
リスクマネージメント委員長の田口に一通の告発文書が届く。
それは田口と同期の速水が、特定業者と癒着していると言う
ものだった。院長の高階はこの問題を田口に丸投げした。
 
問題は屁理屈の倫理委員会であるエシックス・コミュニティー
持ち込まれる。
全ての柔軟性を排除し、杓子定規の権化と化した集まり、
それがエシックス・コミュニティーであった。
そこに君臨していたのが沼田である。
 
沼田は田口を見下し、形式ばかりの書類の作成を強制した。
速水を信じる田口は、あらゆる手段を講じて、速水を救おうとするが、
速水の不正は事実であり、彼はそれを堂々と認めた。
 
 
最前線で救命を使命とする速水にとって、机上の倫理など、
空論以外の何ものでもなかった。
 
 
エシックス・コミュニティーで激突する沼田と速水、
そして決着は、田口のリスクマネージメントに持ち込まれる。
 
 
命を預かる現場には、多種多様な問題が発生する。
それを一つの倫理で解決するのは難しい。
正義は一つではない。
 
この小説の冒頭、
ある看護師の独断で、空きベッドのない病院に緊急患者が
運び入れられる。
それを正義とするのか、組織に楯突くアウトローとするのか、
我々に判断する能力はない。
 
 
この小説は、医療現場を舞台としたエンターテイメント作品
ではあるが、現場医療と倫理と言う、時によっては対立する
事象をもった作品であると、実感した。