yokohamanekoの日記

横浜で猫2匹と暮らしております。

神様のカルテ

 
イメージ 1
 
 
書店でこの文庫を見たときに、おや?と思った。
マンガ雑誌モーニングに連載されている作品のタイトルと同じ。
あのマンガに原作があったのか、と私は思ったのだが、
この作品はすでにベストセラーとなり、映画化もされていると言う。
迂闊であった…。(爆)
 
 
一応購入して置いたが、それきり忘れていた。
テレビで映画のCMが流れるようになると思いだし、読んでみた。
 
 
マンガで一応読んでいたのだが、気楽に読んでいたせいか、
ストーリー自体は分かっているものの、感じ方は違った。
 
 
この物語は、主人公、栗原一止(いちと)の一人称で語られる。
彼は本庄病院の内科医である。本庄病院は365日、24時間受け入れ
をモットーとする地方病院である。
夏目漱石を愛するがゆえに、何やら訳の分からない時代錯誤的な話し方
をするので、「変人」と言われている。
 
 
 
 
日本の医療は崩壊寸前と言われている。
妊婦がたらいまわしにされ、死亡した事件があった。
この事件は地方ではなく、都会であった。
責任を持てないというのが、受け入れ拒否をした病院の釈明である。
それは、ここで断っても他で見るところがある、という願望があるからだ。
それだけ、都会では病院数自体は多い。それが事件の原因でもあった。
 
一方、地方医療はどうか?
たらいまわしなど出来ない。何故なら、他に回せるところがないからだ。
当然、現場は野戦病院の如く化し、医師も看護師も、過酷な労働を
強いられることになる。
栗原先生も40時間拘束など当たり前、担当患者40人を抱えるなど、
医師がいつ倒れてもおかしくない状況にいる。
大変な事なのだと思いながらも、栗原先生の語りはユーモラスだ。
先生の愛読は「草枕」だと言うが、語りは「吾輩は猫である」に近いか?
 
こうやって、ある意味、深刻なリアリティーを持たせないのは、
筆者が同じような医師であるからであろう。
キレイ事じゃない部分だってきっとあった筈だ。
でも作品には、悪人は出てこない。愚かな人は出てくるが、
大体が人間なんて愚かなものなのだ。
良い人しか登場せず、愚かなる人は悔い改め、だからこそ、この物語は、
人の心を暖める。
死生観と言う、かなり重いテーマを扱っているにも関わらず、作調は
さわやかだ。
 
先生の奥様が、ハルさんである。
山岳写真家であるが、映画では宮崎あおいさんが演じている。
宮崎さんはオリンパス・ペンのCMをしていた。
カメラが似合う女優さんである。
 
あまりにも、はまり役だと思うのは、私だけであろうか…。