yokohamanekoの日記

横浜で猫2匹と暮らしております。

オートフィクション 金原ひとみ

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「オートフィクション」 金原ひとみ 集英社

 前述した江國香織さんが、直木賞を受賞した時の芥川賞受賞者が、金
原ひとみさんである。同時に綿谷りささんが受賞し、綿谷さんが十九歳、
金原さんが二十歳、という芥川賞受賞者最年少記録となった。

 金原さんが「蛇にピアス」、綿谷さんが「蹴りたい背中」。この二作品を掲
載した文芸春秋は、おやじ月刊誌にもかかわらず、百万部以上の売れ行
きとなり、「蹴りたい背中」は百二十七万部のミリオン、「蛇にピアス」も六十
五万部を売りあげるというちょっとした芥川賞ブームとなるのである。

 しかし、これには賛否両論噴出した。
慢性的不況に喘いでいた出版業界において、完全に「売れ線」を狙った選
考であると言うことがひとつ。若い女性、しかも比較的ルックスもよい二人
をアイドル的に売り出そうという魂胆が見え見えだと言うのである。

 対するは内容で正当に評価されているというもの。
蹴りたい背中」は、なんとなくクラスの中で浮いている男女ふたりを、十代
の瑞々しい感性で描いている。
蛇にピアス」は、ピアスや刺青などの身体改造を施し、崩れかかったモラ
ルの中で生きる若者を、過激なセックス描写とともに描いている。

蹴りたい背中」は、誤解を怖れずに言うならば、優等生的作品である。
対して「蛇にピアス」は、例えば中高年、特に女性は眉をしかめるような
作品だ。これが芥川賞として相応しいのか、というのも賛否両論あったらし
い。あやふやな記憶だが、選考委員の一人である石原慎太郎氏は「全く
理解出来ない」というように切り捨て方をした。


 まぁ、受賞までの過程はともかくも、「蛇にピアス」を読んだ私は混乱した。
作品の良し悪しなど全然分からなかった。登場人物の行動も、考えも、全
く分からなかった。肉体改造、舌の先を蛇の舌のようにふたつに割ってしま
うスプリットタン、刺青、ピアス…、サディスティックなセックス…。

 モラルも倫理も飛び越した世界の中に、それでも確かに生の動向のような
ものは感じた。若者の実態だとか、生き様だとかって、聞いた風な事言えば
そうなのだろうが、なんだかピンとこない。
 なんか、もっとこう、的確な表現はないのか?私の貧困なるボキャブラリー
では、例えそれらを総動員しようとも、その答えは出そうもなかった。


 良く分からない…、と言う理由で読んでいる作家は彼女以外にいない。

次回続く