yokohamanekoの日記

横浜で猫2匹と暮らしております。

オートフィクション その二


「オートフィクション」 金原ひとみ 集英社
その二


 いつもの如く、前置きが思いっきり長くなってしまったが、ようやく本題。

「オートフィクション」は金原ひとみの四作目である。「蛇にピアス」で金原
作品理解不能の泥沼にハマり込んだおじさんであるが、いまだにハマり込
んでいる。

 主人公、高原リン。物語はまたしても一人称で綴られる。
「22th Winter」、「18th Summer」、「16th Summer」、
「15th Winter」と物語が続く。いや、遡ると言った方が正しいのか。

 それぞれに、シン、シャア、ガトウ、ヒロくんという男の子が登場する。
それぞれに対しある程度深い係わり合いがあるのだが、リンの思考は激
しく飛び回る。時に至高の幸福感へ、時にひどい被害妄想へ、絶対の信
用は些細な事から目覚めた不信感にぶち壊され、ちゃんとスジの通った
理屈は感情に破壊されていく。

 日常生活の中にやたらと「死」と言う概念を持ち込み、ややもすると狂気
に近いような思考形跡を残し、リンの思考はどこまでも流れていく。

 心理描写と言うよりは精神描写だろうか?いや思考描写か?
流れていく言葉の群れは、哲学に聞こえたり、戯言に聞こえたりする。
ほとんどが口語体の文章。頭の悪い女子高生のブログのようで、
斜に構えた文学少女のようで、最初っから人生など投げている怠け者の
ようで…。


 つかみどころが無いのは変わりない。でも少し輪郭くらいはみえてきた
ような気もする。しかし、もしかしたら、自分とまったく思考回路の違うもの
を、自分の理屈で測ろうとしているのが間違っているのかもしれない。

 まだまだ、金原文学からは逃げられそうにない…。