yokohamanekoの日記

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「負け犬の遠吠え」酒井順子

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「負け犬の遠吠え」 酒井順子 講談社文庫


「負け犬とは…
狭義には、未婚、子ナシ、三十代以上の女性のことを示します。
この中で最も重要視されるのは、「現在、結婚していない」という条件です
ので、離婚して今は独身という人も、もちろん負け犬。二十代だけど、バリバリ
負け犬体質だとか、結婚経験の無いシングルマザーといった立場の女性も、
広義では負け犬に入ります。つまりまぁ、いわゆる普通の家庭というものを
築いていない人を、負け犬と呼ぶわけです」


この本の冒頭である。
こんなことを男性が書いたら、まず袋叩きにあうだろう。
女性蔑視だ、男尊女卑の復活だ、個人主義への弾圧だと、フェミニズム団体の
おっかねえ姉さんに怒られること必至である。

しかし、これを書いたのは、自らを「負け犬」と言うである酒井順子さんだ。
内容といえば、なぜ負け犬が発生したのか?負け犬の特徴とは何か?
負け犬が生きていくためにはどうしたらいいか?などをユーモアたっぷりに
交えたエッセイである。

男女平等などと綺麗事の言葉ばかりが幅を利かせている昨今だが、
女性の立場だと不利益になるような事柄はまた非常に多い。それに加え、
社会の少子高齢化によって、「結婚しない女」「子供を産まない女」への
無言のプレッシャーが大きい。
日本は民主主義国家なのだから、個人の自由は保障されており、女性が
結婚しようが、しまいが、子供を産もうが、産むまいが、選択肢を持っている。
しかし、
「子供を産まない女性が、年金を貰うのはいかがなものか?」
などと負け犬にプレッシャーをかけるが如き発言をする政治家もいる。
驚くなかれ、元総理大臣ときたもんである。

まぁ、そんなこんなでいろいろ悩みの尽きないのが負け犬であるが、
負け犬だろうと、勝ち犬(結婚した女性、子供を産んだ女性)だろうといろいろ
あるから、あんまりキーキー言わないで楽しくやろうよ、というのがこの本の
主旨だと思う。


個人的な主観だが、「男女平等」などただの絵空事だと思っている。
同性同士でも平等というのは難しい。ましてや男と女は違う生物だと言っても
過言ではない。ジェンダーフリーだとかって、味噌も糞もいっしょくたみたいな
理屈みたいのが流行っているが、どうもピンとこない。
男性と女性はそもそもその能力が違うのだ。能力というのは優劣のことでは
ない。種類のことだ。その能力は区別されなければならない。

女がキーキー言って怒るのは差別された時である。同じ仕事をしていて
男女で給料が違う、昇進が違う、昇給が違う、賞与が違う、論外である。
これは完全に差別であり、是正されなければならない。
働く女性が妊娠したとしよう。妊娠出産は女性にだけ与えられた尊い能力
である。当然、会社の仕事からは区別しなければならない。どんなに仕事
に影響があろうと、妊娠を原因に退職させるのは明らかに差別である。


ちと話が脱線したが…、
女性の社会進出で、いろいろなことが様変わりしていく。女性の人生に
対する選択肢は、むしろ男性よりも多いかもしれない。負け犬だろうと
勝ち犬だろうと、オス犬だろうと、それぞれの立場を尊重して、ありえない
平等ではなく「バランス」を大切にしていくのが大事なのではないか?

負け犬に「結婚しないの?」などと聞くと非常に傷付くそうだ。男からみると
「そんなことくらいで…」と思うが、だったら、そういうこと聞くのはやめよう。
子供のいない女性に、「お子さん、まだ?」と聞くのも同様だと言う。
じゃ、それもやめよう。
ちょっとしたことでずいぶんと世の中暮らしやすくなるかもしれない。

ちょっと前に新聞の投書欄でこんな記事を見た。
投書したのはばりばりキャリアウーマンの負け犬である。彼女はいかに
自分が仕事に熱意を注ぎ、男に負けぬ働きをしているかを書き綴っていた。
それは立派なことなのだが、こともあろうか専業主婦を攻撃し出したのだ。
挙げ句の果てには
「子供をたくさん産んだからと言って、偉くもなんともないのだ」
と吐き捨てるように結論付けていた。
最初に持っていた彼女への尊敬の念は、根底から覆され、軽蔑へと変化した。
子供を育てると言うのがどれほど大変なことか、実際にやってみなくたって
分かりそうなものではないか。ましてや今時、多くの子供を育てると言うのは。
その日は一日、そのことを思いだすと不快になった。

しかししばらくしてこう考えた。彼女の周りには彼女の立場を尊重してくれる
人がいないのではないか?だからこんな依怙地になっているのではないか?
「まだ結婚しないの?」「いつまで仕事する気?」などと、心無い言葉に晒され
出口の無くなった鬱憤が、自分と立場を反対とする専業主婦に向かってしまった
のではないか?

彼女に言いたいことができた。
それと、この記事を読んで、私が「負け犬」を連発していることに不快感を持った
方に言いたい。

「ねえねえ、この本、読んでみて。おもしろいよ」