yokohamanekoの日記

横浜で猫2匹と暮らしております。

「眠れるラプンツェル」山本文緒

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「眠れるラプンツェル」 山本文緒 角川文庫


野生時代に連載されていた、山本文緒さんの「告白日記」が終了してしまった。
鬱を病んだ文緒さんが、文字通り日記として記していたものである。
しばらく休んでいて、復活したと思ったら終わってしまった。
まだ本調子とまではいかないのだろう。文章の端々から痛ましい様子が
感じられていた。

そんな訳で、前に買っておいた本作を読んでみた。


マンションに暮らす専業主婦。結婚して6年の彼女には、退屈な生活の
繰り返しだった。夫は多忙を理由にほとんど家にいない。子供もいない。
しかし、彼女にとって「退屈」はなくてはならないものだった。

そんな時、夫がもらってきた一匹の猫。
そこから物語は始まる。隣人家族との関係。彼女は隣人の13歳の男の子
に恋してしまう。

読み初めた頃は、自分の意思など持たず、ただ流されるままになっている女
というのが彼女の印象だった。しかしこの時点でもう彼女は壊れかけていた。
複雑な家庭環境の隣人と事を起こす都度に、彼女の人生は破滅に向かう。

平凡な一主婦に過ぎなかった彼女が、自らを貶めるように、事を起こしてしまう。
文緒さんの代表作のひとつである「恋愛中毒」の主人公に少し彼女をだぶらせて
みた。落ち込んでも、落ち込んでも懲りない女。

恋愛や人を好きになる事と、モラルの狭間で、女は落ちていく。
だいたいが恋愛をモラルで縛りつけようとしても無理なのだ。そんな事が出切る
くらいなら、不倫など起こりはしない。

文緒さんの作品には癖のある恋愛小説が多い。毒のある恋愛小説と言った方が
良いかもしれない。「恋愛中毒」よりは小振りだが、本作にもそういう雰囲気がある。


小説の冒頭にグリム童話の一節が書いてある。
魔法使いによって塔の中に閉じ込められてしまったラプンツェル…。
読み終わった時に、なにやら不気味に感じるのである。