yokohamanekoの日記

横浜で猫2匹と暮らしております。

「ララピポ」 奥田英郎

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「ララピポ」 奥田英郎 幻冬舎文庫

中東の国、アラブ首長国連邦のドバイで
働いていた友人に聞いたことがある。
彼の部下にはインド人が何人かいた。
インド人というのは上司に対して非常に卑屈なのだと言うのだ。

「へぇ、日本人ってのはそんなにエライのかい?」

とあてずっぽうに聞いてみたら、これは勿論的外れだった。

理由は、インドの「カースト制度」にあるらしい。
ようするに身分制度なのだろうが、制度自体は禁止されているのに、
インド社会には根強く残っているのだ。
だから、「上」の人に対し、怖ろしく卑屈なのだと言う。


しかし、よくよく考えてみれば、日本にしてもどこにしても、
民主主義における「法の下での平等」などが守られている国など、
およそ見当たらない。
民主主義国家は、資本主義国家でもある。
資本主義ってのは、要するに、カネを持っているヤツがエライのだ。

「人類皆兄弟」
だの、
「人の上に人を創らず、人の下に人を創らず」
だの、
道徳の授業で聞いたことは、社会に出れば、ウソだと気づく。


流行り言葉を使えば、今の日本は、
ほんの一握りの「勝ち組」と、大多数の「負け組」に分けられる。
これも流行り言葉で言えば「格差社会」である。

この物語に登場するのは、そんな「格差社会」の底辺で蠢いている
人間たちばかりなのだ。
それは経済的ばかりとは、限らない。 精神的でもある。

全6編、
連作短編小説になっている。

対人恐怖症のフリーライターが、デブのテープリライターと、
関係を持ってから物語は始める。

気弱のカラオケボックス店員、風俗のスカウトマン、
家事を放棄してAVに走る主婦、 劣等感の官能作家。

どうしようもない、どうにもできない人生を背負い、
それでも人生は続いていく・・・。

そう、泣いても笑っても、人生は続いていく。

ララピポの意味を知り、感慨深く、本を閉じた。