yokohamanekoの日記

横浜で猫2匹と暮らしております。

本読むと…?



読書について

 子供の頃から読書の習慣と言うものはありませんでした。集中力が無く、
受動的快楽を与えてくれるテレビの魔力の虜にされ、活字だけの本はおろか
マンガでさえも読まないありさまでした。
 それが中学生の頃、担任の教師から
「本を読むと、頭が良くなるんだぞ」
 と告げられた時に、ある種の衝撃を受けたのです。
「そうか、本を読むと頭が良くなるのか~、そうなのか~~」
 と地獄の血の池の中で、もだえくるしむカンダタ蜘蛛の糸をたらしてもらっ
たような心境でした。なぜならば、私は小学校の頃からず~と、バカだったの
です。

小学校時代、常に先生の質問に挙手し、堂々と正解を述べる同級生の秀才、
M君がいました。体育を「たいく」と発音せず、きちんと「たいいく」と言い放ち、
そのたいいく以外での科目はすべてトップ。あまりの秀才振りに、体力まかせの
番長も一目置く程の存在だったのです。
 そうだ、そうでした。M君は本が大好きでした。なんの因果か因縁か忘れました
が、M君が自分の家に遊びに来た事があります。その時、M君は私の母親に向か
ってこう言いました。
「何か本がありませんか?」
 絶句する母親…。無理もありません。バカ息子は本など読みませんから、家の中
には一冊も本などありません。しかし秀才M君はその場の雰囲気を察したのか、
「あの、マンガでもいいんですけど…」
 するといきなり母親はすくっと立ち上がり、どこかにでかけてしまいました。いきな
り取り残されて茫然とする小学生二人。
「おばさん、どこ行ったの?」とM君。
「さぁ~~」と私。
 いきなり消えた母親はまたしてもいきなり帰ってきました。しかも両手にマンガ雑誌
をおもいきり抱え込んで。
「マンガでいいんでしょ~」
 M君の前にジャンプだの、サンデーだの、マガジンだのって少年誌をどっさりおくと
額の汗を拭ったのでした。

 ずっと後に聞いたところによると、母親は近くの理髪店に飛び込み、待ち客用のマンガ
を抱え込んで帰って来たらしいのです。もう30年以上も前の東京都下の出来事です。
今風に言えば、田舎のプライベート無き付き合いのようなもので、勝手知ったる他人の家な
のでしょうね。これも秀才M君の雷名にびびった母親の捨て身の行動だったようです。

 なんの話しでしたっけ? あ、そうそう、読書の話しでしたんですね。そうです、そうです。
ま、要するに私はバカだったので、秀才M君に憧れていたんですね。だから担任教師の
口車に乗せられて、本を読み出したのです。担任教師はこのように言いました。
推理小説はだめだぞ。文学小説を読め。例えばだな…」
 と、まぁ、芥川だの、太宰だの、島崎藤村だの、夏目漱石だの、森鴎外だの・・・
カミュだ、サガンだ、ドストエフスキーだ、と言い出す訳ですね…。
「そかそか、ブンガク小説だな」
 と、ブンガク小説にトライするのですが、全然面白くない…。退屈…。苦痛…。ひえ~~!
で、結局、禁断の推理小説に手を出してしまったのです。コナン・ドイルモーリス・ルブラン
アガサー・クリスティー江戸川乱歩横溝正史…。

 やっぱし先生の言う通りでした。本、いっぱい読んだけど、推理小説ばっかだったので、
バカのまま、大きくなってしまいました。ちなみに、読書の習慣は中学で終わり、齢40も超え
た辺りで、このままではいかんのじゃないかと、このままだと本当のバカ、リアルバカになって
しまいそうな危機感に迫られて、また始めました…。 しかし、今さらどうよ?