yokohamanekoの日記

横浜で猫2匹と暮らしております。

「彼女がその名を知らない鳥たち」 沼田まほかる

 
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この著者の作品は二作目である。
一作目は「猫鳴り」であった。
 
 
 
猫の事を扱っているから、そちらばかりに気を取られていたが、
ふと感じていた事もあった。それは、心理描写の比喩が
独特だった事。
人間、百人いたとすれば、考え方など百通りあるし、表現の方法
だってそれだけあるだろう。しかし、特出している人というのがいる。
所謂、独特の作品世界を持っている人たちである。
 
私の中では、村上春樹さんと、川上弘美さんである。
 
どんな作品世界なのかと問われても、私なんぞがつべこべ言うより、
読んでもらった方が手っ取り早い。受け手によってだって、
その作品世界観は変わるからだ。
そして今回、またしても独特の作品世界を見たような気がした。
 
 
 
読後に思ったのは、これはどういう小説なのか?と言うことだ。
 
恋愛小説?
心理サスペンス?
ホラー?
ミステリー??
 
 
どれも当たっているようで、なんだか微妙だ。
本を売る側にとっては、ジャンルというのは大事らしく、
ある程度、読者が想定できる作品が好ましいらしい。
その方が売りやすいからだ。
でも本作は、どこにも落とし込めない。
またしても「まほかるワールド」らしい…。
 
 
 
十和子は、八年前に捨てられた黒崎を忘れられない。
その寂しさに耐えられず、ストーカーの様に立ち入って
くる陣治を拒めずにいっしょに暮らし始めた。
物語の最初から、堕落的に生きている十和子と、
下品で、貧相で、口ばかりが良く回るような陣治の暮らしぶり
が伺われるが、これが、とても不快に思う。
 
十和子は働きもせず、家事もしない。
陣治は壊れた十和子に振り回されて何も出来ない。
勝手な女と、情けない男。
 
そこへ黒崎失踪の知らせが来る。
黒崎の幻影すら消せない十和子だが、更には、
水嶋と言う男と関係してしまう…。
水嶋は妻帯者であり、子供もある。つまり不倫だ。
十和子の全てが不毛でおろかに見える。
それから陣冶は…。
 
 
後半から心理サスペンスのような展開、
ますます壊れていく十和子に陣冶は…。
 
 
陣冶に聞きたいと思う。
それが、お前のやり方か?
それが、お前の「愛」ってやつなのか?
 
 
 
作中に花の名前に関する件がある。
花の名前だの、鳥の名前だのをいろいろ分かれば、
きっと楽しいだろうなと思う。残念ながら、私はどちらも
全く分からない。
 
同じく作中の後半に、こんな事を十和子が思う。
「なんでこの町にはカラスしかいないのだろう」と…。
どんな町でもカラスしかいない訳はない。
スズメだとか、鳩だとかはいるだろう。
彼女がカラスしか見ていないから?
 
そして、彼女が陣冶と言う、鳥の名前を知らなかったから…??