「アミダサマ」 沼田まほかる
表紙の絵が不気味である。
おかっぱ頭の、かわいい洋服を着た女の子だ。
逆光に晒されているのか、自らが発光しているのか分からないが、
まるでこれからその光に隠れて消え行ってしまいそうな印象がある。
そしてこの子には目が無い。目があるべき場所は白くにじみ、
しかし、しっかりとその視線はこちらに向かっているような気がする。
そして帯には「まほかる事件 最恐!」とある。
恐る恐る読みだす…。
「コエ」に呼ばれたのは二人の男だった。
一人はサラリーマンの工藤悠人、もう一人は僧侶の筒井浄鑑である。
二人が発見したのは、廃材置き場にある冷蔵庫。
その中にいたのは五歳の少女だった。
もう、最初っからこの展開である。気が付くともう、物語に引き込まれる。
少女の名はミハル。彼女は浄鑑の養子となる。
そして浄鑑には、この子の力が分かっていた。自分の手元に置き、
その力を封じ込めたかったのだが…。
一方、悠人は再びコエを聞く。コエによって再開したのは祖父であった。
同じアパートに住む律子と関係し、歪んだ関係になっていく。
ミハルは愛猫の死をきっかけに、その力を出し始めてしまう。
浄鑑の住む集落には邪悪が立ち込め、人々はおかしくなっていく。
カアサンの死によって、ミハルは…。
ラストの展開にはもう本に釘づけになってしまった。
映画のようにシーンが頭をよぎる。
一気に最後まで読んでしまう引き込みの強さがある。
ミハルはただ、愛する人や者を失いたくないだけなのに、
その力が現世を歪ませてしまう様な強さを持っている。
哀れな少女はどこに行くのか…。
まほかる作品、これも傑作である。
久しぶりのハズレ無し作家になってくれるだろうか。