yokohamanekoの日記

横浜で猫2匹と暮らしております。

壬生義士伝



壬生義士伝」(上)(下) 浅田次郎 文春文庫

日本を、江戸の武家社会から、近代国家へと誘った革命がありました。
言わずと知れた明治維新であります。

 浦賀にペリーが来航して以来、日米修好通商条約を巡り、勤皇か攘夷
か、佐幕か倒幕か、と、日本中の武士が真っ二つに割れ、江戸幕府が倒
れるまでの時代を幕末と呼びます。
 江戸幕府が倒れた後に、明治と言う新時代が到来するのですが、それ
までには血で血を洗う争いが京都で展開されたのです。その中心に位置
したのが「新撰組」。

 京都守護職、京都の治安を守ると言う名目で設置された組織である「新
撰組」は、泣く子も黙る殺人集団として、知られています。「忠臣蔵」の吉良
上野介が絶対悪のように言われるのと同じ様に、倒される側にあった新撰
組も長らく「悪」として扱われていました。
 それを司馬遼太郎が取り上げた事により、新撰組に対する評価が変わっ
てきたのだと、何かの書評で読みましたが、定かではありません。

「壬生義人伝」では、新撰組隊士で、諸士取調役兼監察であり、剣術師範
でもあった吉村貫一郎が取り上げられています。
 この物語には、吉村を知る何人もの語りべが現れます。その語りべを通
して、読者は吉村を少しずつ知っていくのです。

 武士とは何か?
 武士の義とは何か?
 人としての義とは何か?

 この物語はいきなり吉村が切腹しなければならないシーンから始まりま
す。吉村が死ぬところから、この物語は始まり、語りべ達によって、時は遡
っていくのです。

 今回も「泣かせ屋次郎」の異名は伊達ではなく、本領発揮とばかりに、そ
れこそ、これでもかと泣かせてくれます。あまりにも露骨な「泣かせるぞ描
写」に、心おきなく泣いてください。くるぞ~、くるぞ~~~って分かります。

 時代小説が苦手な人も、是非、お勧めです。また、時代小説に精通して
いる方も、今までの武士の概念が変わるのではないでしょうか?