yokohamanekoの日記

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「虹列車・雛列車」 花村萬月 集英社文庫

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「虹列車・雛列車」 花村萬月 集英社文庫

またしてもお初作家である。
正直言って、花村萬月なる作家はスキンヘッドのおじさんだと言う
認識しかない。芥川賞作家だと言うことも知らなかった。
書店の山積みコーナーにあり、手ごろな厚さだったので購入した。


短編集である。五編からなる。
オープニングが「虹列車」で、エンディングが「雛列車」である。
その間にはさまれて三篇ある。

中の三篇は花村さん自身の紀行文である。
行き先は沖縄。

最初はユタと呼ばれる、巫女のような仕事をする女性を訪ねる話し
である。花村さんはそこで圧倒的存在感に魅了され、その時だけ
とは言え、信者になってしまう。

次に、沖縄の色街を訪ねた花村さんが、廢鶏(はいけい)なる鶏の
スープを飲むのだが、廢鶏とは、卵が産めなくなった鶏の事だそうだ。
卵を産めなくなり、やせ細って肉としても使えず、ところが、油がそぎ
落ちてスープにするとうまいと言う、鶏にとってはかなり切ない行く末
の話しである。

最後は、美しいのだが、少し智的障害のある売春少女が登場する。
売春婦でありながら、あまりにも無垢なるその少女の少し悲しすぎる
物語である。



以上、三篇は恐らくノンフィクションか、それに近いものであろう。
しかし、表題作の二編に至ってはフィクションのようである。

花村萬月の講演を聞いた「僕」は、その口車に乗せられて旅に出る。
行き先は青森。なにもあてにせず、宿をつかわずに旅にでる。
旅の途中でなにやらいろいろな光景にでくわす「僕」は、
旅とともに成長していく。

厳寒の北国と、沖縄のコントラストが小説の構成として面白いと思う。
初めてお目に掛かった花村さんの文章は、比較的硬質であるが、
内容はきわめて大衆風で、良い意味での下劣さも兼ね備える。

最近、女性作家の作品が多かったせいか、ある程度、がさつで、
男性特有のシモネタ的内容も、かなり新鮮に感じた。

これまた何冊が読んでみたい作家に出会うことができたようだ。