yokohamanekoの日記

横浜で猫2匹と暮らしております。

「蛇を踏む」川上弘美

イメージ 1


「蛇を踏む」 川上弘美 文春文庫

なんと、前回の更新からすでに二週間以上も経過していた。
(「本の事など」に限る)
一冊読むのに二週間以上もかかったのかと驚きつつ、
仕事も忙しかったし、ギターにも集中していたしと、お茶を濁すことにする。


とりあえず、またしても川上弘美さんを読んで見た。
「蛇を踏む」というタイトルになにがしの意味を見出すべく
購入してみたが、「蛇を踏む」というのは何かの象徴ではなく、
そのままずばりだった。

主人公の「ヒワ子さん」の一人称で物語は語られる。

ヒワ子さんは藪の中で蛇を踏んでしまう。
踏まれた蛇は五十歳くらいの女になり、ヒワ子さんと暮らす。
いきなり非現実的なる展開である。
こいつはオカルトチックになるのか、あるいはホラーか?
と先走ってあらぬイメージを増幅させるが、
蛇女は部屋で食事の支度をして待っていた。
奇妙なヒワ子さんと蛇女の生活が始まった。

蛇というのは神秘的なイメージがある。
最初の人類であるアダムとイブに禁断の木の実を食べるよう
そそのかしたのは蛇である。このために蛇は神によって、腹ばいに
なって動くようにされてしまったと聖書にある。

読み進んでいくうちになにかあるはずだと思いつつも、結局、
そこに蛇を神格化させたり、邪悪化させるような展開にはならない。
ただただ、奇妙である。
しかし、それは無理に深読みしようとした結果かもしれない。
そう感じたのは著者本人の後書きによる。

川上さんは自分の小説を「うそばなし」と呼ぶ。

「あとがき」より抜粋
もしもこれを読んでくださるかたの中に、「うそ」の好きなかたが
いらしたら、わしの作った「うそ」の中でちょっと遊んでみては
くださいませんでしょうか。そうしてくださったら、とても嬉しいのです。
どうぞよろしく。


「いや~ね、私の書いている小説は、そんな額にしわ寄せて読む
ものじゃないわよ」と言われているような気がして可笑しかった。

この本には他に「消える」と「惜夜記」(あたらよき)の二編が
収められている。こちらも面白い「うそばなし」になっている。

もういっぺん読んでみようか…? 抽象画を眺めるようにだ。
リアリティーのある小説も悪くないが、こんなのも良い。
さて次はどんな精神世界で遊ばせてくれるのか…。

その作家の持つ色が見え始めると、もっといろいろな作品に
触れて見たくなるのは当然の事である。