yokohamanekoの日記

横浜で猫2匹と暮らしております。

「ファーストプライオリティー」山本文緒

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「ファーストプライオリティー山本文緒 角川文庫

この本のキーワードは31である。
登場する主人公は全て三十一歳、納められている作品、三十一作。
七ページ程度の短編がずらっと並んでいる。

タイトルは最優先事項とでも訳せばいいのか。
三十一歳とは、すでにある程度ものが見える年齢であろう。
四十にして迷わず、というほどにはなっていないまでも、
自己の選択肢に対してこだわりがあっても良い年齢だと思う。

この小説には三十一人の三十一歳が登場し、三十一のスチュエーション
があり、そして三十一通りのこだわりがあるのだ。
それは仕事であったり、恋愛であったり、人生観であったりする。

どんな人が、どんな事を、最優先事項として捉えているのか、
山本文緒さん独特の、ちょっと斜に構えたような視点で描かれる
作品はどれも興味深い。

偏屈なOL、出戻り娘、処女、国境越えの不倫男、息子を溺愛する母親、
派遣社員の女、更年期の女、初恋の女…。

そして最後の「小説」という作品では、小説を書くために夫婦関係を破滅
させてしまった女性の話しが出てくる。かなりシリアスな展開といい、
鋭い心理描写といい、山本さん御自身の事かと、ちと興味本位に考えて
しまう。


自分が三十一歳の時って何していたのか?
三十一などとっくに過ぎた私のような人間はこう考えるだろう。

自分が三十一歳になったときってどうなっているのだろう?
まだ三十代を仰ぎ見ている人たちはこう思うのだろう。

読後の思考にいかがだろうか?