yokohamanekoの日記

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「乳と卵」川上未映子

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「乳と卵」川上未映子
第138回 芥川賞受賞作



一月に138回芥川賞の発表があった。
受賞は川上未映子さんの「乳と卵」であった。

川上さんは、美人である。
しかもシンガーソングライターだと言うのだ。
当然、各メディアでの露出度も多くなろうが、
週刊文春のグラビアに載ったのには驚いた。

所謂、セクシーショットである。
ヌードでもなし、別段、さほど過激なものではないが、
作家がやることか?とちょっとの抵抗を覚える。

が、考えるに、歌手であるのだから、芸能人であろう。
芸能人ならば、グラビアの仕事など大歓迎のはず。
自分のおじさん度もだいぶ上がってきたと実感する。

と言うか、
コンビニの週刊誌の表紙の見出し、
「リ○・ディゾン全裸写真入手」
「お宝映像 100連発」
「大スターの過去映像」
などなど・・・、
を見つけては、つい手にとってしまう私に、
つべこべ言う資格は無いではないか・・・、
と反省・・・。

以上、余談・・・。(おほん・・・汗)



で、
文芸春秋の3月号に「乳と卵」が掲載されたので、読んだ。

登場人物は三人。
語りべの「私」、「私」の姉、巻子、巻子の娘、緑子

緑子は小学校の高学年。 そろそろ初潮があるや?
との年代。 子供ではあるが、自分の体の変化に不安になる
微妙な年齢である。

巻子は、ある男性との間に緑子を産んだ。
「離婚した直後から~」というくだりがあるから、
結婚はしたのだろうが、緑子は父を知らない。

「私」の名は最後まで出てこない。
巻子の妹であり、三人で何年間か同居していたが、
東京に出てきた。
何かの目的はあったのだろうが、仕事はうまくいって
いない。

そんな「私」のところへ、
大阪から巻子と緑子の親子が上京する。
三人の二泊三日を描いたのが本作である。

なにがそうさせたのかわからないが、巻子は
豊胸に執着心を示す。
上京の目的も、豊胸の情報収集のためであり、
「私」も信じていたが、巻子が行った先は別だった。
行った先を考えると、豊胸も分かるような・・・。
が、これは私の私見である。

緑子は母に心を閉ざしていた。
小説の中には、
緑子の手記があちこちに散りばめられているので、
読者にはそうでないことは分かるのだが、
巻子と「私」には分からない。
発声で言葉を出さず、筆談で言葉を発するのは、
緑子の未熟な感性の抵抗だったのだろうか・・・。


酔って帰った母と、娘が激突したとき、
私の瞳孔は見開き、一文字一文字を一心不乱に追った。
川上さん・・・、
あなたは、浅田次郎か・・・。

子供を使って、人を泣かせるのは割とたやすい。
しかし、この小説には、そこまでの布石がちゃんと
散りばめられている。


物語は、別にハッピーエンドにはなっていない。
でも、「ふうっ」と溜息が出るところで、
不思議な余韻を残し、この小説は終わる。


辛口の選評の中で、川上弘美さんはこう語る。

「たくさんの人にあったような気分である。
 それら、たくさんの人たちの、みな候補作の中にいた。
 そこにいて、喋って、笑って、怒って、茫然として、
 しみったれたことを考えて、後悔して、平然として、
 とにもかくにも、いろいろと独自のうごきかたをしている
 のであった。
 
 少なくとも三十人以上の人たちに会った。どの人に
 もう一度会いたいか。じっと考えた。
 緑子。ワンちゃんその二人だと思った。
 緑子は「乳と卵」の中の小学生。
 ワンちゃんは「ワンちゃん」の主人公。

 なぜ再会したいのかと感じたのか、考えた。
 緑子について
 推し量れないところがある。推し量れないけれど、
 理解できないということではない。
 あと十年経った緑子がどうなっているのか。
 たいそう興味をひかれる。
 病んでいるのに、不思議にすこやかな印象がある」



まったく同感である。

ミュージシャンとして、作家として、
更にその感性を磨いて欲しいと思った。