しっぽ大王の独り言10
吾輩は猫である。
しっぽ大王こと、ボスである。
吾輩の朝食は、大体、午前二時か三時である。
たいら氏は朝早い仕事をしているので、こうなる。
しかし今日は、三時になっても起きない。
四時になっても起きない。
まさか、死んだのでは? と思って心配したが、
どうやら息はあるようである。
五時になった。さすがに腹が減ってかなわない。
今日は日曜日ではないが、仕事が休みのようだ。
このままでは、吾輩の方が空腹で動けなくなる。
仕方がないので、うつ伏せに寝ているたいら氏の
背中あたりを前足で左右に踏む。
ふみふみ、ふみふみ
ふみふみ、ふみふみ
「んごっ?」とたいら氏がうなった。
うなっただけでまた寝込んでしまった。
もう一回、
ふみふみ、ふみふみ
ふみふみ、ふみふみ
「おお、ボス…、おはよ、今何時??」
猫に時間を聞くやつがいるか…。
もう五時過ぎておる。
そう言いたいのだが、吾輩はあいにく猫である。
人間の言語を発せない。
仕方がないので、
「うわ~~ん」
と鳴いてやった。
「お~そっか、腹減ったか~」
とたいら氏が起きだした。
意思の疎通はちぐはぐではあるが、
吾輩の最終目的は達せられそうなのでそれでよし。
吾輩が、一応食欲を満たすと、気づけばたいら氏はまた
寝ている。これでは外に出られないではないか。
もう一回、
ふみふみ、ふみふみ
ふみふみ、ふみふみ
「お~ボス、そか、ミルク忘れたな」
とたいら氏は起きだすと、ミルクを注いでくれたが、
そうじゃなくて、外に出たいんだが…。
またしても
ふみふみ、ふみふみ
ふみふみ、ふみふみ
「あれ、ミルクいらないの?」
たいら氏は、寝ぼけ眼で吾輩を見つめる。
しばらくして、ようやく気付き、今日はごみの日
なので、ごみをまとめると、部屋の外に出た。
吾輩、めでたく外に出られた次第である。
人間と言うのは物わかりの悪い動物である…。