yokohamanekoの日記

横浜で猫2匹と暮らしております。

嫌われ松子の一生 一



嫌われ松子の一生(上)(下) 山田宗樹 幻冬舎文庫


 ベストセラーを追いかけるとか、話題本を貪り読むとか言う趣味はないが、
ダビンチ・コード」の様に、これでもかと本屋のあちこちに山積みされている
と、つい読んでみたくなるのは人情であろう。

 同じ様に、映画化され、本屋の店頭はもちろん、ラジオや雑誌の映画評
などの話題となっているのが、今回取り上げた「嫌われ松子の一生」である。
 一人の女の転落人生を、悲しいのだけれど、歌と音楽で、悲哀を描いた
作品なのだと聞く。あいにくと私は映像メディアに疎く、テレビもろくすっぽ見
ない様な浮世離れ野郎である。

 そんな訳で、書店にて文庫本を手に取り、裏表紙の能書きを読んで見た。

「東京で大学生活を満喫していた川尻笙は、突然の父の訪問で三十年
以上前に失踪した伯母、松子の存在と、彼女が最近東京で何者かに
殺されたことを知る。~中略~
それは彼にとって凄まじい人生との遭遇だった。惨殺された女性の生涯
を通じて炙り出される人生の光と影を描く傑作巨編」
 とあった。むらむら~と興味をそそられた私は文庫本二冊(上下巻)を
レジに運んでいた。

 一週間程度もあれば読めるだろうと思っていたのだが、一日で上下巻
(約七百ページちょっと)を読破してしまったのである。それほどまでに私
はこの物語に引き込まれ、松子と共に、喜び、悲しみ、怒り、懊悩し、年甲
斐も無く青臭い感情にほだされてしまっていた。

 以下、その内容に触れる。ネタバレであるから、未読で内容を知りたくな
い方はここで、御退席願いたい。読後またお越し頂ければ幸いである。



 裏表紙の能書きの通り、東京で大学生活を満喫していた川尻笙は、突然
の父の訪問で三十年以上前に失踪した伯母、松子の存在と、彼女が最近
東京で何者かに殺されたことを知る。その場には恋人の明日香もいた。


 時はフラッシュバックし、昭和四十五年十一月。この年は西暦1970年。
松子は中学教師をしていた。修学旅行の下見と称して校長の共をさせら
れる。旅先の旅館でレイプされかかるが、抵抗する。校長は自己の保身の
為に自らの権力で松子を恫喝し、事実を封印した。この当時、女性に購う術
は無かった。


 笙と明日香は殺された松子伯母のアパートの片付けを頼まれる。隣人や
警察官から話しを聞く内に、関係者らしき一人の人物の写真をみせられる。
 全く偶然にも、二人は近くの荒川河川敷でその男と遭遇するが、男は一
冊の本を落として逃げた。本は新約聖書だった。


 昭和四十六年五月、松子担当の中学三年の修学旅行。ところがこの旅
行中に宿泊先の売店で現金盗難があった。松子は自分の担任する、龍洋
一と確信するが、証拠がない。処理に困った松子は自分の犯行として、穏
便に事を運ぼうとするが、松子を疎ましく思う校長の強権発動で、教師をや
め、家をも捨てた。


 笙と明日香は、残された新約聖書から、それが府中刑務所にあったもの
だと突き止める。何かを思ったのか、明日香は帰郷してしまった。


 昭和四十六年十二月、松子は八女川徹也と生活を共にしていた。八女川
は作家志望の文学青年だったが、売れず、松子に体を売る事を強要しようと
していた。
 しかし、踏ん切りのつかない松子を置いて、八女川は自殺した。

 松子は悲しみのあまり、八女川の親友だった岡野に縋り、女の弱みに付
け込んだ岡野の愛人となってしまう。


 新約聖書を落とした男と会うには、荒川河川敷にいるしかないと判断した
笙は彼と再会する。彼はかつての松子の教え子、龍洋一だった。


 昭和四十七年五月、妻子ある岡野との不倫に溺れていた松子は、情事
の後、岡野をつけ、自宅を知る。正妻に自分の存在を告げた。岡野は自分
を選ぶと確信していたが、岡野は松子を捨てた。
 松子は自殺を企てるが失敗する。

 吹っ切れた松子が選んだのは、トルコ嬢だった。真摯に仕事に取り組む
松子はやがて、店のナンバーワンにのし上がる。


 以下、次回に続く。